
アイドルグループNGT48は、メンバーである山口真帆さんの暴行被害騒動により活動休止状況が続いていました。2019年4月21日にNGT48劇場でのチーム公演が約3カ月半ぶりに行われ、グループの活動が再開します。
NGT48活動休止は生活問題
山口真帆さんの暴行被害騒動の解決が求めらているなか、3ヶ月以上活動が休止状況のNGT48グループの財政状況が心配となります。この記事ではスタッフやメンバーに給料が支給されているか生活に関わる問題に注目し、NGT48の経営について考えてみたいと思います。
番組終了や契約保留
2018年12月8日暴行事件以降、NGT48が出演する番組やCMなどが相次いで終了します。また、企業や新潟市との契約がいくつか保留となりました。
以下はNGT48に関する契約の保留や出演番組の休止・終了の一覧です。
- 新潟県との契約更新保留
- 南区のPR大使の契約更新保留
- 一正蒲鉾CM放映中止
- TeNYテレビ番組放送終了
- BNSラジオ番組放送休止
- FM新潟テレビ番組休止
- 新潟商工会議所開港記念PR動画公開中止
また、NGT48劇場での公演もずっと休演状態が続いています。
メンバーとスタッフへの給料の支給
NGT48の活動休止状態が3ヶ月以上続いています。グループの収益が大幅減ってしまうことは想像できます。収益が減ると、スタッフやメンバーへの給料の支給に問題がないか実は心配です。
収益と支出のイメージ
実際NGT48の活動休止がスタッフやメンバーへの給料の支給に影響が出ているかを客観的に検討するにあたり、NGT48の収支について少し考察してみましょう。
収益と支出の構造
一般的に企業の収益と支出の構造が以下の図の通りとなっています。スタッフやメンバーに支払う給料の現金があるかどうかを考える際、まずは売上と固定費に注目すれば大まかの状況を把握することができるでしょう。

収益(売上)
NGT48は劇場公演をはじめ、ネット配信、メディア出演など多岐にわたって活動し収益を上げています。主な収入源は以下の通りです。

レコード収益
主にNGT48名義のCD販売収益です。NGT48の最後のCD発売は2018年10月3日リリースの「世界の人へ」です。半年以上CDのリリースがありません。
デジタルコンテンツ収益
NGT48モバイルのコンテンツ、モバイルメール、DMM.com AKB48グループ LIVE!! ON DEMAND(LOD)のサブスクリプション、コンサート映像DVD
※AKB48グループ映像倉庫とスマホゲームの課金など一部はNGT48の収益として計上されないと思われます。
ライブエンターテイメント収益
劇場公演チケットの売上、個別握手会(劇場盤収益の一部)、コンサート、AKS主催舞台
※AKB48名義のイベントはNGT48の収益として計上されないと思われます。
インタネット配信事業
SHOWROOM配信での投げ銭が収入になります。収益の一部は配信メンバーへ支給されます。
メディア出演収益
テレビCM、テレビやラジオ、ネット配信番組の出演、雑誌掲載。プロダクション所属メンバーの露出はあまり減っていませんが、ギャラはプロダクションとAKSとの協議によって配分が決まります。
プロダクツ収益
グッズ 、劇場公演の集合写真。ちなみに山口真帆さんのグッズの販売が中止となりました。その分の収益が減ります。
以上収益の分け方は事業の方針によって変わります。
活動休止による収益の減少
NGT48の活動一部休止により基本グループ全体の売上が大幅減少しています。デジタルコンテンツによる収益と劇場公演のチケット売上、グッズの売上が主な収入源として残っています。
劇場公演チケット収益
NGT48劇場のキャパが295人です。チケット料金が3,100円(研究生公演が2,100円)です。1回の劇場公演で満員の場合、チケット売上が295 x 3,100円 = 914,500円となります。
月間収益については、騒動前の2018年11月に計17回の劇場公演が行われました。いずれの公演も満員を前提に計算すると、15,546,500円の売上となります。
直近の2019年3月の場合、公演数が特別公演4回(チケット料金3,100円)と研究生公演9回(チケット料金2,100円)行われ、チケット売上が3,658,000 + 5,575,500 = 9,599,300円となります。なお、公演開催による舞台セットの変動費のコストや公演集合写真販売の収益が発生します。
支出
NGT48を運営するにあたり、稼働率に関わらず発生する固定費用と稼働率や売上による変動費用が支出になります。
- NGT48劇場ランニングコスト
- NGT48プロジェクト事務所ランニングコスト
- スタッフやメンバー、アルバイトの人件費
- AKB48グループチケットセンター運用費(部分負担)
- NGT48モバイル、モバイルメールなど外部サービスの運用費
固定費
新潟市に位置するラブラ2の4FのあるNGT48劇場のランニングコストと人件費が毎月の固定費となり、メインの支出となります。なお、 NGT48プロジェクト事務所や外部サービス運用費について情報が少ないため今回は対象外とします。
NGT48劇場ランニングコスト
NGT48劇場の店舗面積が約250坪となります。ラブラ2の店舗坪単価が公開されていないため、近隣エリアの店舗の相場を参考し、NGT48劇場の賃料を12,000円/坪とします。また、共益費や光熱費なども毎月発生します。飲食店などのデータを参考し共益費+光熱費を3,000円/坪とします。賃料と共益費、光熱費を合わせて、15,000円/坪 x 250坪 = 3,750,000円となります。公演を一切行わなくてもNGT48劇場を維持するために、毎月375万円を支払う必要があります。
※より正確な数字をご存知の方はぜひご教授ください。また、細かい舞台ライトや音響による光熱費の変動や設備のメンテナンス費は省略します。
人件費
NGT48事業関連の人件費支出を計算について、AKSなどによる公開データが見つからなかったため、日本国内関連のあらゆるデータを参考しながら算出しています。正確な数字ではないのでご了承ください。考え方の方にご注目ください。
基本組織構成
AKSの組織図から分かる通り、AKB48やHKT48など地域グループ別に体制があります。NGT48運営部に専任する従業員の内訳は以下の通りです。などスタッフとアルバイトの人数は推定となります。役員は対象外とします。
劇場支配人(従業員、部長相当) x 1名
劇場副支配人(従業員、課長相当) x 1名
一般従業員(従業員、総務やマネージャーなど) x 14名
メンバー(専属契約形態、NGT48専任メンバー、兼任メンバーとプロダクション所属者を除く) x 39名
アルバイト(劇場運営補助) x 若干名
人件費についてはAKSなどによる公開データが見つからなかったため、給料の実態がを把握するのが困難となります。業界の相場や目安を参考に推計する形となります。
人件費-従業員
今回は計算をシンプルにするために、スタッフの月給を初任給ベースで考えます。 また、劇場支配人は年齢と役職から推計しています。
劇場支配人 45万 x 1名
劇場副支配人 38万 x 1名
一般従業員 22万 x 14名
以上の数字から計算すると、毎月従業員の額面の給料が391万円となります。経営者観点として、社会保険料など福利厚生費が発生するので、福利厚生費と額面給料の係数の目安「1.16」を加味すると、毎月454万円となります。
人件費-専任メンバー
専任メンバーの月給を考えるにあたり、正規メンバーと研究生メンバーとの賞与の差が発生するかを考える必要があります。こちらもAKSなどの公開データが見つからなかったため、推定となります。
正規メンバー 18名
研究生 21名
ここで保守的な推定方法を採用し、正規メンバーは新潟県最低賃金を参考に固定給ベースとして計算します。新潟県最低賃金は時間額 803円となります。勤務時間を1日8時間、月20日勤務をベースにすると、固定給の最低賃金水準が128,480円となります。NGT48専任の正規メンバーが18名なので、メンバーの全員分の毎月発生する人経費が128,480円となります。こちらも経営者観点で福利厚生費の分を加味して、128,480 x 1.16 = 149,037円となり、人数をかけると18名分だと、2,682,662円となります。専任正規メンバーに支払う毎月の給料が268万円となります。268万円が最低賃金水準となります。
一方、研究生は劇場公演と握手会への出演の給料のみとし、公演と握手会などのイベントがない場合、給料が出ないと考えます。
人件費合計
以上の推計から、NGT48に毎月発生する人経費が454万円(従業員分)+268万円(専任メンバー分)で合計が722万円です。
労働分配率アプローチ
人件費について、今回は業界水準や最低賃金から推計しています。別のアプローチもあります。経営(経済学)では労働分配率という概念があります。労働分配率とは企業の売上総利益(粗利)のうち、人件費に充てる比率のことです。一般的では、50%が目安とされています。つまり、1億円の売上総利益に対して、人件費がそのうちの50%で5千万となります。飲食業など機械化が困難で商品単価が安い産業(労働集中型)については、労働分配率の目安が60%とされています。
NGT48の売上総利益の最低水準
NGT48の場合、粗利が不明のため労働分配率アプローチで人件費を割り出すことができません。仮に人件費が上記の結果の722万円だとして、労働分配率が50%だとしたら、NGT48事業の売上総利益が毎月1,444万円となります。毎月1,444万円を売り上げないと赤字になります。
固定費支出合計
NGT48劇場のランニングコストと人件費を計算してみました。推計ではありますが、毎月NGT48の支出が以下となります。
劇場ランニングコスト:375万円
専任従業員とメンバーの人件費:722万円
毎月の支出合計:1,097万円
投資回収計画
NGT48を立ち上げるにあたり、AKSや他の投資家による資金調達が行われました。また、NGT48劇場の内装工事費や店舗スペースの保証金、敷金、礼金などが発生します。これらのコストを投資費用として支払われました。実際投資の回収計画について詳細は不明ですが、毎期一定の金額を現金として返済しなければならないはずです。
支出が収益を上回る可能性
以上収益と支出を可能の限り試算してみました。 2019年2月をベースとした試算の結果として、収益が960万円(劇場チケット売上)で、支出(固定費)が1,097万円でした。137万円の赤字となってしまいました。
他の収益と支出の実態によって黒字になる可能性はありますが、決して楽観視できません。とりあえずNGT48のスタッフやメンバーによる給料未払いの報告はありませんでした。ただし、2019年6月に支給される賞与(ボーナス)の額が大幅減るでしょう。
最後に
山口真帆さんの暴行被害騒動について、もちろん被害者の山口真帆さんへのあらゆる面のケアが必要だと思います。今後彼女のキャリアに影響が出ないような処置も求められます。
一方、NGT48のために働いているスタッフの皆さんとメンバーの皆さんは生活しなければなりません。NGT48の活動の一部休止が続くと、売上減少による減給が充分考えられます。
以上、少し経営の観点から暴行被害騒動によるNGT48への影響を考察してみました。各種数字が試算によるものですが、企業経営の考え方だけでも勉強になればと思います。
YouTube動画バージョン
YouTube動画が後日公開される予定です。
登録お願いします
おすすめ:NGT48関連商品
参考資料
NGT48第三者委員会調査報告書
https://ngt48.jp/news/detail/100003226
[…] NGT48 存続と解散 山口真帆さん暴行騒動による運営財政状況の打撃 […]